【新入社員「独立・起業」希望が過去最低】らしい。僕はこう見ます。
この記事の分量…2,200字
読み終えるまでの時間…約5.5分
問題のニュースはこちら。皆さんはどう受け止めますか?
僕の見方(結論)
保守的とかじゃなくて、社員と企業の入社時点での思いのミスマッチが減ってるという解釈ができるんじゃないの?
そもそも入社後すぐ「独立・起業」を志す社員ってどんな人?
①最初からそのつもりの人
そもそも終身雇用?何それ?な業界や企業がありますよね。業界ならコンサル・人材・投資銀行とか、規模でいうとベンチャー企業全般。個別企業で挙げるとすれば楽天・リクルート他にも色々。
こういったところに入社する人は「あくまで現職はファーストキャリアで、セカンド以降も当然あるよね」と各人明確さの差はあれど、考えているわけです。「とりあえずリクルートで定年迎えて、年金給付までは再雇用かな」って人はごく少数のはず。
そんなわけで、必然的にキャリア選択が生じる企業に入社した人は、独立・起業(・転職)を志して当然と言えます。
②就活頑張らなくて就職先に納得いってない人
当たり前ですけど、全ての学生が第一志望の企業に入れるなんてことはなくて、精一杯やったのに不本意な結果だったり、そもそも本気で就活してなくてそれなりの企業からしかオファーが来なかったり、人によって様々。
ここでは大きく4パターンに分けます。
A 精一杯やり切り、第一志望(群)に入社
B 精一杯やったけど、志望度の高くない企業に入社
C そこまで頑張ってないけど、第一志望(群)に入社
D そこまで頑張ってないし、それなりのところにしか入れなかった
A・Cは努力の差はあれど満足のいく結果が得られたんだから、「まずはここで頑張っていこう」と前向きな気持ちで仕事に取り組めるはず。Bに関しても、やり切った結果としての今があることをきちんと認識していれば、そうホイホイ別の環境に想いを馳せることもないでしょう。
ここでのポイントはDで、このタイプは全力で就活していなかったから「自分はもっとやれたし、自分がいるべき場所はここじゃない」とか幸せの青い鳥を想いがちになるわけです。その結果、入社してまだ何の仕事に触れたわけでもないのに「独立・起業、いいじゃん!」と。
あくまで感覚ベースですが、①の人は過去に比べ多少増えこそすれ減少はないんじゃないかなと思います。②についてはよくわかりません。ただ、①+②の占める割合が過去最低だよってのがこの調査結果です。それなら多分②は減ってるのかな?と思ったわけです。
このパートのまとめ
【(X)入社後すぐに「独立・起業」を主張する人】
=【①最初からそのつもりの人】+【②就活頑張らなくて就職先に納得いってない人】
①を横ばいor微増とすると
X減少→②減少 となる。これって新入社員にとって悪いことじゃないよね。
企業としてありがたいのはどっち?
企業にとっての新卒採用は、それ自体にもコストが掛かるけど、それ以上に一度採用すると基本的にはクビにできないため、新入社員一人当たり生涯賃金+福利厚生という数億円規模、かつ40年程度の大型・長期投資になります。
だからそれだけの投資に見合うリターンを将来的に生めそうな人を、企業は採用過程で注意深く選抜していくわけです。
そうして選び抜いた新入社員ですが、多くの企業で彼らは戦力の頭数に入っていません。むしろ先輩上司が面倒見なきゃいけない分、マイナス。それでも頑張って育てて、将来は自社に大きな利益をもたらす人材になってもらおうとします。
そんな投資資産が購入後いきなり「いやー、やっぱ独立・起業っしょ」とか言い出したら、そりゃ困るわ。「入っちまえばこっちのもん、一生ぶら下がり続けてやる!」というのも大いに迷惑ですけど、いなくなられるのはもっと困るはず。
そんなわけで、最初に挙げた特に流動性の高いところ以外の多くの企業では、入社後すぐ独立・起業とか言い出す人は回収不可能性の高い残念な投資資産にあたると言えます。長くいてくれた方がありがたい。
このパートのまとめ
・新卒採用は企業にとっての大型投資
・しかも最初のうちはリターンが見込めなくて、長く勤めてもらって徐々に回収していくスタイル
・だから、いきなり独立・起業とか主張する資産はサブプライム資産
→独立・起業希望が過去最低なのは企業にとって悪いことじゃないよね。
再度、結論
ここまで見ればわかるように、「独立・起業」希望が過去最低であることは
①就活を頑張った、または、就職先に納得している人の割合が増えてる
②企業としても、(未来のことは不明ながら)とりあえず自社で頑張っていこうとまずは思ってもらえて嬉しい
上記2点を意味するんじゃないか、というのが僕の見方です。
社員と企業の入社時点での思いがマッチしているんなら、まずはいいんじゃないでしょうか。
もしかしたら独立・起業希望者の方がパフォーマンスが高くて、しかも案外辞めないんだけどみたいになるかもしれないですが、それについて推測する材料は紹介した記事の中にないので置いておきます。そもそも「保守的であること」の良し悪しや、「独立・起業」がとにかく是ってこともないでしょうし。
日本生産性本部には是非とも、この入社時アンケートでの独立・起業に対するYes/No回答結果と、その回答者のその後のキャリアとの関連まで調査して欲しいところです。心変わりとかも当然あるんじゃ?